| 独立行政法人 科学技術振興機構による 地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業です。 |
![]() |
ピーマンなどで難防除害虫として知られるマメハモグリバエが発生すると、幼虫が葉にもぐりこみピーマンの生産性が著しく損な われるので、この害虫駆除のために化学殺虫剤が使用されている。そこで高知大学では、ピーマン果実中に広食性のマメハモグリバ エの摂食・産卵行動を阻害する成分が存在することを見いだし、その単離・構造解析に成功したことからこの有効成分を新しい害虫 防除剤として開発した。これは、商品とならない廃棄ピーマンの果実から抽出する天然物由来の害虫防除剤であって、化学殺虫剤と 違って食の安全・安心を実現するうえ、農業廃棄物のリサイクルとして環境にも人にも負荷の少ないものである。
農業廃棄物を利用した新しい害虫防除剤の開発 高知大学農学部 教授 金 哲史
ピーマン果実中に難防除害虫として知られる広食性のマメハモグリバエの摂食・産卵行動を阻害する成分が存在することを見いだし、 その単離・構造解析に成功した。実際には、この害虫防除剤を廃棄ピーマンの果実から抽出する。世界でもっとも厳しい消費者の為に 日本において収穫された農作物の多くはハネと呼ばれ捨てられている。ピーマンの場合、ハネは1〜2割にも及び、その多くは農業廃 棄物として焼却されたり、地中に埋められたりしているが、これを再利用する。すなわち、廃棄ピーマン果実から難防除害虫としてマメハモグリバエの摂食・産卵行動を阻害する有効成分を新しい害虫防除剤とし て開発を試みた。活性成分は可食部に存在することから、環境にも人にも負荷の少ない害虫防除剤の開発が可能と考えられる。
図1.マメハモグリバエの成虫とその食害痕 1. ピーマンのマメハモグリバエに対する抵抗性 マメハモグリバエは他のナス科植物同様、ピーマンを加害するが、その加害は幼苗期に限定され、成長したピーマンの果実や上位葉 に対しては全く加害をすることができないことが明らかとなった。この要因はピーマンに特異的に含まれるフラボノイド配糖体(図3) {Luteolin 7-O-?-D-apiosyl-(1-2)-_-D-glucoside}が示す本種に対する産卵阻害活性に基づくことを明らかとした。ピーマン葉のメ タノール抽出物は本種の産卵行動を完全に阻害した(図2、4)。
図2 ピーマンメタノール抽出物の活性図3 ピーマンに含まれる産卵阻害物質
図4 様々な濃度における産卵阻害活性2. 他の農業害虫に対する活性 他の農業害虫に対する活性を調べたところ、トマトハモグリバエに対しても同様の活性が認められたことから、本化合物はハモグリ バエ類に対して特異的に作用するものと考えられた。
3. まとめ 本研究で、幼苗期のピーマンはマメハモグリバエの加害を受けるものの、開花期のピーマンは全く加害を受けないことを見いだした。
その抵抗性の要因は成長に伴って増加する産卵阻害物質の存在に基づいていることが明らかとなった。その産卵阻害物質の本体はフ ラボノイド配糖体であった。 研究・開発上のメリットは、日本のみならず世界的な市場が対象になること、減農薬が図れること、環境に対しての負荷が著しく 低いこと、原材料が安価でかつ容易に入手可能なこと、安全性が極めて高いことおよび農業廃棄物の有効利用等である。