特許流通支援コーナー


 投稿を始めて丸5年経過した5月号では4月1日から施行された「職務発明」の内容と
「特許流通成功事例」(車椅子用二輪キャスター)をご紹介します。

新職務発明

 特許法第35条が規定する、使用者等に職務発明に係る権利の実施と承継について安定的な地位を認め、他方で従業者等には「相当の対価」の支払という形で の職務発明に対する適切な評価を保障する制度である。使用者等と従業者等の均衡の中で職務発明を活性化しようとするものとして、比較的バランスの取れたも のである。近年の知的財産に対する国民的関心の高まりを背景に、特許法第35条の存在が改めて意識され、訴訟が多発するとともにその在り方が問われるに至 っている。

最近の訴訟事例


T.特許法第35条(職務発明)
 使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」という。)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)がその 性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発 明」という。)について特許を受けたとき、又は職務発明について特許を受ける権利を承継した者がその発明について特許を受けたときは、その特許権につい て通常実施権を有する。

 従業者等がした発明については、その発明が職務発明である場合を除き、あらかじめ使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ又は使用者等の ため専用実施権を設定することを定めた契約、勤務規則その他の定めの条項は、無効とする。

 従業者等は、契約、勤務規則その他の定めにより、職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、又は使用者等のための専用 実施権を設定したときは、相当の対価の支払を受ける権利を有する。

 契約、勤務規則その他定めにおいて前項の対価について定める場合には、対価を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われ る協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、対価の額の算定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところにより対価を 支払うことが不合理と認められるものであってはならない。

 前項の対価についての定めがない場合又はその定めたところにより対価を支払うことが同項の規定により不合理と認められる場合には、第三項の対価の 額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければなら ない。

U.付則第1条(施行期日) この法律は、平成十七年四月一日から施行する。
 なお、弁護士による職務発明制度に関する無料相談(四国経済産業局主催)も受けられますので下記迄ご連絡下さい。


特許流通成功事例

車椅子用二輪キャスター
【成約日】平成16年3月10日

【経緯】
 FA分野の計装ソフトウェア技術を本業とする(株)アヴァンティ福岡の社長は、車椅子をターゲットとしてこれからの高齢化社会に貢献したいと考え ていた。そのため、同社長は移動が簡単で行動範囲が広く、長時間使用しても疲れない車椅子の情報を求めて福岡県知的所有権センターを訪れた。同セ ンターで産業技術総合研究所の段差を乗り越える車椅子の特許を紹介されて興味を持ち、さらに、その技術に基づく試作品を見学し、良好に動くことも 確認できた。その後、発明者による技術指導や特許流通アドバイザーの仲介による契約条件の協議等を経て、特許実施許諾契約を締結し、製品化への活 動を開始した。


福岡県知的所有権センターに車椅子に関する新技術を求めてきた。
産総研特許「段差昇降用キャスター」を紹介。試作品見学。
技術指導、使用許諾内容など、契約条件を協議。
成 約


【技術概要】

利用技術 特許第3030345号 「車椅子用二輪キャスター」
概  要 車椅子では僅か数センチの段差でも、それを乗り越えるには大きな労力が必要となる。そこで段差を昇降できる機構を車椅子の前輪に適用する。 前輪部は前方の小輪、後方の大輪という2つの車輪から構成され、平地では大輪が前輪としての機能を担う。そして段差を登る時は、まず小輪が段差の 上段部に接地し、小輪のガイドで段差の上段部を進み、次に大輪が上段部に引き上げられる。昇降可能な段差は約8cmである。

【企業】
導入企業 株式会社アヴァンティ福岡(福岡県福岡市)
提供企業 独立行政法人産業技術総合研究所(茨城県つくば市)

【販売状況】

 平成16年9月より段差を越えるキャスターとして販売開始の予定。

【成約に関するコメント】

 ライセンシー企業社長の熱い想いと発明者の積極的な協力により、契約の素地として非常に良好な関係ができた。具体的な契約条項については、いろいろ な議論があった。しかし新しいコンセプトの車椅子を創り出したいという大きな目的の下に、双方の歩み寄りがなされ、契約締結に到達することができた。

【図面】

車椅子装着状態
車椅子装着状態
キャスター部分
キャスター部分
「段差昇降時の動き」
大輪が段差上段側に移動する状態

段差昇降時の動き


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(財)高知県産業振興センター 特許流通アドバイザー 吉本 忠男
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