独立行政法人 科学技術振興機構による
地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業です。
RSP事業だより

 液晶ディスプレイ用液晶は低分子液晶でありますが、これの注入には多くの技術的配慮が必要で、その計算機シミュレーション等を開発しました。 この技術は高分子液晶の高い機械的強度や、優れた寸法安定性に基づく長所を持つ、高機能スーパーエンプラとして注目されている高分子液晶の成形 加工に応用することができます。高配向であるが故に割れ易く、分子配向を考慮した加工技術が必要です。このため用途に応じた成形条件を適切に選 択するためのシミュレーション用ソフトウエアーを完成しました。


液晶薄膜流動解析用ソフトウェアの開発
高知工科大学 教授 蝶野成臣


 液晶ディスプレイに用いられている液晶は低分子液晶であるのに対し、高分子液晶は高機能・高性能なスーパーエンプラの一つとして注目されてい ます。これは、高分子液晶が有する高い機械的強度や、優れた寸法安定性に起因しているからです。しかし一方で、高配向であるが故に配向に沿った 方向に割れが生じやすい欠点も包含しており、分子配向を考慮した成形加工技術が重要となっています。このため用途に応じた成形条件を適切かつ迅 速に選択することが肝要で、計算機シミュレーションに期待が寄せられています。
 通常の等方性高分子材料については金型内の流動を満足にシミュレートできるCAE技術がこの10年程度の間に飛躍的に進歩し、今では多数の汎用ソフ トウェアが市販されています。これに対して高分子液晶は複雑な流れ挙動を示すので、CAE技術のベースとなる流動の理論的取扱いは等方性高分子材料 に比べて極めて立ち後れており、さらなる理論的、数値的研究が強く望まれています。本試験では高分子液晶の金型内薄膜流動に関する汎用ソフトウェ アの開発を行いました。


図1

図1 金型の平面図
図2

図2 自由表面位置の時間変化
 プログラミングに用いた基礎式は連続の式、運動量方程式、角運動量方程式、エネルギー方程式、および構成方程式です。構成方程式には、 Transversely Isotropic Fluid(TIF)理論を用いました。流動方向の代表長さに比してその厚さは極めて薄いので、通常の等方性流体の運動において 実績のあるHele-Shaw近似を基礎式に施しました。この結果厚さ方向に解析的に積分することができ、3次元流動を数値上は2次元の扱いとなり計算時 間の大幅な短縮が可能となりました。基礎式の離散化には有限差分法を用いました。


 図1は本計算に使用した金型の平面図です。流路の厚さは3mm、成形圧力(ゲージ圧)は6MPa(約60気圧)、入り口温度は300℃、金型温度は200℃の 場合の計算を行いました。充填に要した時間は約6.4秒でした。
 図2は自由表面位置を0.2秒間隔で描いたものです。スムーズな充填が得られています。
 図3(a)〜(c)は金型の厚さ方向各位置における分子配向分布です。zは流路厚さ(3mm)で無次元化した厚さ方向の位置を表し、z=0.1は金型壁面 近傍、z=0.25は金型壁面と金型中央面との中間位置、z=0.5は金型中央面に対応します。図のように金型中央面とそれ以外の面で配向状態は大きく異な ります。特にz=0.1では分子配向の乱れた領域が目立ちますが、これは高分子液晶の特徴です。


 このような低配向の領域は最終製品の低品質や強度低下の要因となります。本ソフトウェアを活用すればこのような位置の予測や、さらにはこのよう な領域が発生しないような金型形状や成形条件の決定が可能となります。
 図4は図3と同様の位置における温度分布です。厚さ方向位置によって温度が大きく異なること、また高分子液晶の先頭で温度が高いことが分かります。


図3
図3 厚さ方向の各位置における分子配向分布


図4
図4 厚さ方向の各位置における温度分布