パビリオンの見学
愛・地球博の見学旅行から帰ってくると、鉄鋼関連の学会からの月刊誌が届いていた。トップ記事は「愛知万博における環境配慮と鉄骨建築」である。展 示物・展示品を見るために、パビリオンに入館するために、列を作って順番を待つものと思いこんでいた。建築物・構造物・パビリオンだけを外から観察することも 見学の一つの方法だったことを知らされたのである。後悔することしきりである。思い出しながら、この記事の内容を紹介したい。
長久手会場の主要エリアを結ぶためのグローバル・ループは、幅20m程、全長2.6kmの板張りの環状のメイン・ストリートである。 この空中回廊は起伏に富んだ地形を痛めつけることなく各エリアを繋ぐために考え出された。回廊を支える橋脚は、複数の鋼管が地上の一点(支点) から扇状に広がった構造をしており、その基礎となる支点は、ねじ様の鋼管杭を地下に回転貫入させたものである。この基礎鋼管杭を逆回転させることで、 地中に残存させることなく、また地上に大きな傷跡を残すことなく、撤去できることになる。
トヨタ館やガスパビリオンでは、解体時に障害となる溶接接合や鋼材のリユース性を下げるようなボルト孔での締結結合(ボルトとネジによる締め付け法)を使わずに、 鋼板あて板、ボルト、ネジを使った摩擦締結法を採用している。三井・東芝館は単管の足場用の仮設資材を使い、建物を覆うルーバーとして、外装の美しさを追求している。
西ゲートを入ると直ぐに、竹籠を被せたようなパビリオンが目に付く。長久手日本館である。竹ケージの下にはホーロー鋼板に光触媒(TiO2) をコーティングした屋根材が使われ、これに散水して蒸発潜熱による温度低下を図っている。光触媒外装材は超親水性(水に対する良好な濡れ性)を持っており、 散水により屋根表面に薄い水膜が形成される。少量の水で効率よく打ち水効果が得られるのが特徴である。
各国の展示空間は世界の地域ごとに6つのグローバル・コモンに集約されている。これらのパビリオンは、組み立て、解体、リユースを考えて、 18m×18m×9mのモジュール単位で構成され、積み木のように接続して大きくできる構造である。これを基準として各国は内外装を個性豊かに仕上げている。
水の蒸発に伴う気化熱で温度を下げようとする試みは「愛・地球博」の至る処で目に付く。ワンダーサーカス電力館の順番待ちの広場では天井からの微細な 水滴のスプレーで温度を下げているし、三井・東芝館のルーバーには水が伝い流れる仕掛けがあり、熱交換機の役割を果たしている。 ギネスに載った最大の万華鏡の名古屋市パビリオン「大地の塔」では四つの外壁面を水が膜のように静かに流れている。世界最大級の緑化壁 (バイオラング)も植物の蒸散機能を使って温度を下げる試みの一つである。バイオラングとは生物(Bio)と肺(Lung)を組み合わせた造語である。 前もって調べておけば、そのつもりでいれば、詳しく見学できたのにと悔やまれる。