| 独立行政法人 科学技術振興機構による 地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業です。 |
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液晶パネルや半導体の製造工程では、ガラスやシリコンウエハーなどの基板に感光性樹脂(レジスト)を塗り、これにパターンを露光し、不要部分を溶剤で溶かし、 イオンの拡散や蒸着などで回路形成をします。この工程を複数回繰り返して微細なパターンを形成し、その都度、不要レジストを除去します。 現在、不要レジストの除去には有機アミン系薬液を使っていますが、今回の方式は、水蒸気含有オゾンでレジストをカルボン酸に分解し、 その後純水によって溶解・除去するもので、高価で有害な有機アミン系薬液を使わないためコストは5分の1、環境負荷は10分の1に低減できる見通しを得ました。
オゾンを用いたレジスト剥離に関する研究開発
国立高知工業高等専門学校 助教授 堀邊英夫(物質工学科)
1.はじめに
1990年代以降顕在化した「環境問題」が与えるインパクトは、1970年代の「公害問題」以上のものがあります。 オゾン層の破壊、地球温暖化等の環境問題が年々顕著になり、地球規模での環境対策が重要になってきました。 また、ISO14001、省エネ法改正、COP3などの環境関連規制も強化され、2001年には「循環型社会形成推進法」が施行され、環境問題に対する取組が企業の盛衰を分けると言っても 過言ではありません。しかし、逆に環境関連の事業は、非常に魅力ある事業とも言えます。
このような環境浄化や環境負荷低減技術への期待が、半導体、液晶等の電子デバイス製造工場にも影響を与えています。 これらの製造工程では、成膜、パターン作製(レジスト塗布、露光、現像)、エッチング、レジスト剥離、洗浄等のプロセスを複数回繰り返すことにより、 基板上にトランジスタを形成しますが、微細素子のパターン作製に用いるレジストの剥離工程において、硫酸、過酸化水素、 アミン系有機溶剤など環境負荷の大きい薬液を使用しています。とくに液晶製造においては有機アミン系溶剤を使用しますが、高価(数百円/リッター)で、 しかも大量に使用(1・あたり数百cc以上)するので、これに代わるレジスト剥離方法の開発が期待されています。 一方、オゾンは強い酸化力を持ち、反応後は分解して再び酸素に戻るため残留性がなく環境に優しいので、この強い酸化力を用いレジストを酸化分解し剥離したいという考えは 以前からありました。しかし、レジスト剥離工程にオゾンを適用した場合、剥離速度が遅く実用化には至っていません。2.本研究の内容
2.1.湿潤オゾン方式今までにもオゾンを用いたレジスト剥離があります。オゾンアッシングと呼び、レジストを最終的に炭酸ガスと水分に分解し、揮発させ除去します(図1)。 この場合、レジストを揮発ガスにまで分解するため、基板の温度を250℃以上にする必要があり、デバイスによってはダメージを受けます。 そこでデバイスにダメージを与えない低温で処理するために、レジストとオゾンとの反応中にさらに微量の水分を供給する方式(湿潤オゾン方式)を新たに考案しました。 レジスト膜をオゾンで酸化し、微量水分により加水分解してカルボン酸に変えたあと、水に溶解させて排出します。この実験方法を次に紹介します。 オゾンガスを加熱した水中にバブリングさせ、この時、蒸気圧分のオゾンガス/水蒸気を発生させます。水とレジスト基板との間に温度差を設け (水を高温、T1>T2)、これによりレジスト上にオゾン/水を結露させます(図2)。この方法では、水分の供給量がポイントになりました。 レジスト剥離速度は基本的にはオゾン濃度に比例することが既に分っています。供給水分が多いと水がオゾンの進入を妨げ、 レジストと反応するオゾン濃度が低下します。一方、オゾンは水に対する溶解度が非常に低いため、水分が多いと水中でのオゾン濃度が低下しますので、レジスト剥離速度が低下します。 逆に、供給水分が少ない場合は、レジストを加水分解する水分が不足するため、反応が進行せず、レジスト剥離速度が低下します。 このように水とレジスト基板との間の温度差がポイントです。本研究では最適温度差を見出して、レジスト剥離速度1μm/分を達成しました。
図1.オゾン/水によるレジスト剥離の原理 図2.湿潤オゾン方式![]()
2.2.コスト、環境負荷、装置床面積の低減 有害な薬液をレジスト剥離に用いないため、コストが従来の1/5以下になりました。従来は、薬液代が全体のコストの80%、電力代が15%、廃液処理代が5%を占めていたためです(図3)。 さらに、薬液の排液処理が不要なため、環境負荷は1/10以下に低減できます。これは、従来、廃液中に含まれる薬液量が全体の90%、残りの10%がレジスト自身であったためです(図4)。 従来の剥離液によるレジスト剥離装置では処理後の基板上に有機物が残るため、基板洗浄装置(紫外線処理)がさらに必要でした。 オゾンは強力な酸化力を持つため、有機物(汚染)の除去が可能です。従って、本装置でレジスト剥離を行なうと、処理後の基板表面は清浄であり、洗浄装置が不要になり、 装置床面積は半分程度に縮小できます。
図3.ランニングコストの比較 図4.環境負担の比較![]()
3.おわりに
本研究は平成16年度科学技術振興機構によるRSP事業に指定されました。この研究により、環境負荷の低減が期待できかつ実用化の可能性が高いという理由からでした。 その後、直ちに平成16年度「産業技術研究助成事業」(NEDO)にも採択され、3年間で5200万円の助成を受けることになりました。 環境分野のトップで採択され、日経新聞、高知新聞等にも紹介されました。本研究は、大阪工業大学の神村先生と共同で行っています。 今後大型設備などを導入して本格的な研究に入り、2007年半ばまでに装置を開発し、最終的には県内のルネサステクノロジーや、高知カシオへ導入するのが目標です。 半導体、液晶等の電子デバイス製造分野におけるレジスト剥離装置の日本市場は、液晶分野(80億円)、半導体分野(180億円)であり、世界市場は日本の約3倍といわれています。