独立行政法人 科学技術振興機構による
地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業です。
RSP事業だより

 魚類冷水病は、国内外において非常に被害の大きな疾病であります。これまで化学療法剤による治療が行われてきた結果、薬の効かない多剤耐性菌の存在が確認され現在問題となっています。 現在世界中で、魚が先天的に保有している生体防御機能を最大限に引き出すワクチンの開発が行われていますが、未だ有効性が高く実用的なワクチンの開発に至っておりません。 そこで、我々はアユならびにサケ科魚類の冷水病に対する実用的で有効性の高いワクチンの開発を行いました。 我々が開発しましたワクチンは一定時間培養後、菌体をホルマリンで不活化し、菌体成分全てを餌に混ぜた形で経口投与し、実験感染を行った結果、高い生残性が得られることを確認し、 現在、動物用医薬品としての製造承認を得る為の国家検定の段階にあります。


魚類冷水病に対する実用的で有効性の高いワクチンの開発研究
高知大学大学院 黒潮圏海洋科学研究科 大嶋 俊一郎 氏


 
原因菌の増殖を検討したグラフ  左の図は、本症の原因菌であるFravobacterium Psychrophilum の液体培地中での増殖様式を検討した結果であります。 縦軸に菌の増殖量を、横軸に培養時間をとりました。この実験結果から本菌対数増殖期は6時間から28日時間の間にあることが分かり、その後、 定常期に移行することが明らかになりました。
 上の結果を基にして、感染実験を実施しました。縦軸に感染実験後の累積死亡率を、横軸に感染実験開始後の時間(日)を表しています。
 その結果、対数増殖期の菌体を用いた場合、非常に高い死亡率が得られ、 その結果を右の図に示しています。
感染実験の結果のグラフ
感染を行ったニジマスの症状  左に示した写真は対数増殖期と定常期の菌体をそれぞれ用いて、浸漬法により感染を行った際のニジマスの症状を表したものです。
 上の写真が定常期、下が対数増殖期の菌で感染実験を行った結果です。
 ここに示すとおり、対数増殖期の菌体を用いた場合、自然感染魚で認められる典型的な冷水病の症状を再現できました。 この試験結果を国際誌に発表しました。
感染と経口ワクチンを投与した結果
 上の図は、対数期と定常期の菌体を培養した後、不活化して餌に混ぜ、2週間の間に3日おきに5回ワクチンを投与した後に、上で示した感染実験を実施し、 経口ワクチンの効果を確認した結果であります。縦軸に感染後の生残率を、横軸に感染後の経過日数を示しました。
 図中の■印は対数期の菌体をワクチンとした試験区、▲印は定常期の菌体をワクチンとした試験区、○印は通常の餌を与えた対照区です。 対数期の菌体を与えた区では、優位に感染後の生残率が他の区よりも高く、ワクチンの効果が確認されました。
 2001年より本格的に魚類冷水病予防に関する研究を開始し、今年で早くも4年が経ちました。 これまで本研究は科学技術振興機構のRSP事業で早くから育てていただき、本年度より同機構の独創的シーズ展開事業 委託開発の補助金により、 更にスピードアップし研究開発が進められ、現在、世の中にワクチンを出す最終段階に入ることができました。 国内はもとより、海外でも大きな被害の出ている感染症を、一日も早くこのワクチンで救えることを願っております。