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高知工業高等専門学校 機械工学科科 教授 吉田 聖一 |
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TEL/FAX:088-864-5524 E-mail:yoshida@me.kochi-ct.ac.jp |
私は東京の石油タンク建設会社に25年間勤務した後、5年前に高知高専に赴任して来ました。会社では、 石油タンクの強度に関する数値シミュレーションに携わっていました。地震応答、構造解析等を有限要素法や境界要素法で解析し、 その結果を設計に反映するという仕事でした。石油タンクは消防法の規制を受けますが、法改訂のために審議する 消防庁関係の委員会には会社時代から参加しています。また、消防研究所(現:総務省消防庁消防大学校消防研究センター)とも、 石油タンク強度について共同研究を行っています。
石油タンク 石油タンクのユーザーは、石油精製、石油化学、電力会社などです。また、苫小牧、むつ小川原、福井、菊間、 志布志などにある国家石油備蓄基地もユーザーです。石油タンクは、ハイテクとは縁遠い重厚長大構造物の代表的なものです。 電力会社は石油火力から撤退し、製油所は縮小廃止されており、石油タンクは余っています。したがって、 今後新たに多くの石油タンクが建設されることはありません。しかし、国内には約75,000基の石油タンクがあり、 その大部分は昭和40、50年代の高度成長時代に建設されたもので、30年以上経過しています。このことが、 私のような研究者を悩ませていることであり、この方面の研究を活性化させている理由です。 古いタンクを一気に新しいものに取替えることはできません。今のものを重大な事故を起こさずにこれからも使いつつ、 徐々に新しいものに取替えていくかが、重要な研究課題になります。 供用適正評価 石油精製・石油化学業界では、「供用適性評価」が活発に行われています。 英語では「Fitness for Service」、略して「FFS」と言います。これは、以前に新設した機器・構造物が現在も使用可能か、 今後どの程度の期間使用可能か、だめならどこを取替え、どのように補修するかというような評価です。 これには、強度評価、余寿命評価、非破壊検査、モニタリングなどの様々な技術を集大成し、リスクベース工学も導入します。 強度評価については、非線形破壊力学、塑性力学、非線形有限要素法など、現在の高度技術を駆使します 。これを石油タンクに取り入れたFFS基準を、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(旧:石油公団)、タンク建設会社、 ユーザー、大学・高専が共同で、(社)日本高圧力技術協会の委員会で作成しているところです。 浮屋根 石油タンクの重大事故は、地震時に起きることが多いです。平成15年十勝沖地震では、 苫小牧の製油所で石油タンクの火災が起き長時間燃え続け、地域の環境問題になったことは記憶に新しいことです。 被災タンクの油面上には、鋼製浮屋根が常時浮いているのですが、スロッシングという地震時の液面の揺れが原因で破損し 油中に沈没しました。その結果大気中に曝された油面に何らかの原因で引火し、火の勢いが強く有効な消火活動ができないまま 油が尽きるまで燃え続け、44時間後にようやく鎮火しました。このような火災を防ぐには、有効な消火方法の開発と沈没しない浮屋根設計 の2点があります。
沈没しない浮屋根設計には、まず浮屋根がスロッシングでどのように変形し、 どのような荷重がかかって破損したのかを解明する必要があります。直径100m近いタンクに板厚が数ミリの浮屋根が 浮いているということは、有限要素解析の観点からは、非常に難しい問題を含んでいます。固定されていない構造物が、 液体とともに連成して振動するものです。この浮屋根問題は、早く解決しなければなりません。研究拠点 (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構の競争的資金で、本年5月に横浜国立大学・安心・安全の科学教育センターに、 寄付講座「石油タンク安全管理学分野」が発足しました。ここでは、浮屋根問題も含めた石油タンクの基盤研究を行います。 それには横浜国立大学の関根和喜教授、大阪大学の阪上隆英助教授の研究グループとともに、 高知高専・機械工学科の若手教員も加わった研究ネットワークを作り、基盤研究とともに、社会人技術者の再教育、 世界に情報発信する研究拠点作りを目指します。
平成15年 十勝沖地震で沈没した浮屋根