独立行政法人 科学技術振興機構による
地域研究開発促進拠点支援(RSP)事業です。
RSP事業だより

 現在、いりこの選別は手作業によって行われておりますが、選別が不十分な場合、別種のいりこや雑魚が混在し、 その商品価値が著しく低下してしまいます。そのため、作業には熟練した知識と経験が必要とされ、加えて体力も要求されるため、 現場では作業員の不足や高齢化などが問題視されております。本研究では、それらの問題を解決するために手作業による工程を自動化し、 この選別作業の省力化および高精度化を目指しています。


高速自動いりこ選別システムの開発
高知工科大学 教授 竹田 史章 氏


 本研究では、紙幣識別、掌紋、指紋、顔画像、米選別による個々の認識でその有用性が示されているニューラルネットワーク(NN) を用いて、高速自動いりこ選別システムを実現することを課題としています。絡みあった状態(ビン状態)の対象物群(いりこ) から個々の対象物を傷つける事なく取り出すための搬送機構の開発と、取り出された個々の対象物を正しく識別する知的認識処理技術の 開発を行い、これらを組み合わせた実証機を製作します。提案するシステムは、搬送、抽出、選別の一連の工程からなっております。


選別 流れ

手作業による選別から提案システムによる選別へ

独立駆動系を採用した搬送システム

 NNで識別を行うには、画像から個々のいりこを特定し抽出する必要がありますが、ビン状態のいりこを個々に抽出することは 不可能です。そのため、いりこが撮像部に搬送されるまでに1匹もしくは数匹に分離する必要があります。その際、いりこに損傷を 与えてはなりません。その課題を解決するため、この実験筐体では6台のベルトコンベアが独立して駆動する独立駆動系を採用しました。 各ベルトコンベアには2個の近赤外線センサが取り付けられており、センサ1が対象を感知すると回転し、センサ2が対象を感知すると停止。 このベルトコンベアを個々に駆動させることにより、ビン状態のいりこを分離搬送します。実際に5種類のいりこ (いわし、うるめ、かたくち、きびなご、ほおたれ)を用いた実験では、成功率が71.6%でした。 これにより、独立駆動系がある程度有効であることが確認されました。今後は、分離搬送率の向上および搬送時におけるいりこの ロール回転を考慮し、対象に適した筐体角度を検討する必要があります。 また、ソフトウェアによる搬送制御の改善とベルトの摩擦についても検討を行います。


米選別用アルゴリズムを応用した抽出部

 選別の前段階として、個々のいりこを抽出しラベリング処理を行う必要があります。そこで、本システムでは抽出部に米識別の際に 使用してきた米選別用抽出アルゴリズムを応用しています。抽出手順としては、まずカメラで撮像したいりこの画像を閾値を用いて 2値化します。その後、重なり合ったいりこを個々に分離するため8-近傍収縮処理を行い、処理したデータを用いてラベリング処理を行い ます。最後に、求めたラベル領域内の中心位置を求め、その情報よりいりこを1匹ずつ抽出します。これまでの研究により、 いりこが重なり合っていなければ100%抽出が可能であることが確認されました。

ニューラルネットワーク(NN)を用いた選別部

 選別には非線形識別が可能な最小構成の3層構造の階層型のNNを使用します。柔軟な識別が可能なNNを使用することにより、形状、 大きさ、模様にばらつきのある自然物であるいりこを正確に選別することが実現可能と予想されます。選別手順として、 まず抽出部で抽出した画像データを元にしてスラブ値を作成し、NNに入力します。次に、閾値を用いてNNからの出力をチェックし、 いりこの種類に対応した各選別ボックスにいりこを投入します。ただし、前述のとおり、 NNを用いて選別を行うためには抽出部までにいりこを個々に分離する必要があります。 そのため、2匹以上の別種のいりこが選別部に搬送された場合には、いりこを再度搬送系に流し込みます(環流)。
 NNの前処理として、擬似回転補正アルゴリズム(閾値を用いて2次元画像情報を1次元ストリング情報にする手法)による特徴抽出を 検証しました。この擬似回転補正は、米監査システムにおいて米の回転に対して有効な特徴抽出として用いられたアルゴリズムで あります。米の場合は表面に模様が無いので、回転が発生した場合においても特徴抽出は問題なく同一スラブ値が得られます。 したがって、2次元情報である入力画像を1次元に置き換えることが可能でした。一方、いりこには模様があるので、 回転により1次元配列に格納される値の並びが大きく異なってしまいます。これは、スラブ値が異なることを意味し、 別種のいりことして選別される可能性が考えられます。そのため、擬似回転補正アルゴリズムでは正しく特徴抽出することができず、 識別能力の向上を期待できません。また、同種類のいりこにおいてもスラブ値が異なる問題点があります。そこで、 個々のいりこの特徴量が正しく抽出でき、回転に対しても不変な特徴抽出として2次元高速フーリエ変換(2DFFT)を検討しました。 入力画像を周波数領域に変換することにより、回転に不変な特徴量として算出可能なことを期待し、 まず、模様を有さない木材チップを対象に実験を行いました。識別結果より、2DFFTによる前処理を適応した場合(平均識別率80.7%) では擬似回転補正による前処理(平均識別率74.7%)に比べて高い識別能力が得られることが確認できました。 つぎに、大きさと模様の違う5種類のシリコン製ルアーを対象として識別実験を行いました。学習サンプルが全て正常に識別されたこと から、学習に異常はないと考えられます。今後はさらに識別能力の高いシステムを検討します。