特許流通支援コーナー

 8月号では特許庁の取り組み(6月16日プレス発表)「先使用権制度ガイドライン(事例集)の公表について」のご紹介と 「特許流通成功事例」(根元が錆びない金属ポール)をご紹介します。

先使用権制度ガイドライン(事例集)の公表について

戦略的なノウハウ管理のために

●国際的な競争が激しくなる中、各企業は、研究開発成果である発明を、公開が前提となる特許権として取得とするか、 ノウハウとして秘匿するかを戦略的に選択しノウハウとして秘匿することを選択した場合には先使用権の確保のため、 積極的に証拠を確保することも重要。
●先使用権制度の円滑な活用を図るため、委員会を構成し(委員長 中山信弘東京大学教授)、 制度の明確化や具体的な立証手段を記載したガイドライン(事例集)を作成した。

先使用権制度の制度趣旨

● 他者が特許出願する前から、事業やその準備をしていた者については、他者が特許権を取得したとしても例外として事業を継続できる制度。
● 公開を代償に特許権を取得した者と、秘匿しつつ事業やその準備を行っている者とのバランスを保つもの。

特許法 第79条:先使用権

 「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、 特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、 その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。」

技術の戦略的な管理についてのフロー図

明確化のポイント

・「特許出願の際現に」とはどのようなことか
・発明者以外にも先使用権が認められるのか
・「事業の準備」とは具体的にはどのような場合か
・先使用権が与えられる「発明の範囲内」とは
 (実施行為、実施形式の変更可能な範囲の明確化)
・先使用権が消滅する場合とは など

@事業の準備とは?
「即時実施の意図」があり、その意図が「客観的に認識」されるときに、「事業の準備」が認められる(最高裁)。
A実施形式の変更は認められるか?
発明として「同一性を失わない範囲内」まで認められる(最高裁)。

1.証拠の例

@技術関連書類
・技術ノート、技術成果報告書、設計図、製品仕様書
@技術関連書類
・技術ノート、技術成果報告書、設計図、製品仕様書

2.証拠力を高める具体的な手法

@公証制度の利用(確定日付、事実実験公正証書等)

    例:
  1. 証拠資料をまとめて袋とじして確定日付を取得
  2. 製品自体を箱に入れて確定日付を取得(右下図)
  3. 事実実験公正証書作成の際には、技術に詳しい弁護士、弁理士を立会人にする。
A民間タイムスタンプ・電子署名の利用
  1. タイムスタンプにより「いつ」と「何を」を証明
  2. 電子署名により「誰が」を証明
B郵便制度の利用
  1. 内容証明郵便
  2. 引受時刻証明郵便

発明完成から事業の実施までのイメージの一例 製品自体を箱に入れて確定日付を取得

特許成功流通事例
根元が錆びない金属ポール
経緯
 本製品の製造を委託されていたライセンシーの拓南伸線鰍ヘ、本製品に対する市場からの問合せが多く、また、評価が高いことに注目し、 委託製造だけでなく販売もできるように、ライセンサーであるリフォームサイエンス鰍ノ対し本特許技術の実施許諾を求めた。 ライセンサーから相談を受けた沖縄県特許流通アドバイザーがライセンシーとの契約内容や、既に販売を行っていた企業との調整について指導し、 特許権実施許諾契約の締結に至った。 【成約日】平成17年1月27日

製造委託先が特許の実施許諾を求める

製造委託元が特許流通ADに相談

特許流通ADが契約及び既存販売企業との調製を指導


成 約
技術概要
利用技術: 特許第3330912号
「金属ポール並びに金属ポールの施工構造」
概   要: 従来金属ポールの根元部分の内部には雨水が溜まりやすく、錆による強度低下で、台風などの強風により、 根元が折れ曲がってしまうことがあった。本特許技術はこれを防止するため、金属ポールの下端部に樹脂キャップを付けた補強ポールを挿入し、 本体ポール側面の樹脂キャップ上部と同一レベル位置に水抜き穴を付けて、水の溜まり、錆の発生を防止したものである。
企 業
導入企業: 拓南伸線株式会社(沖縄県中城市)
提供企業: リフォームサイエンス株式会社(沖縄県宣野湾市)
販売状況
 特許権の実施許諾を受けた拓南伸線鰍ヘ、平成17年4月から沖縄県下で一般販売を開始した。
成約に関するコメント
 ライセンサーの関連会社で、本製品を独占販売していた企業は当初、商圏を脅かされると心配し、特許権の実施許諾に難色を示した。 しかし、ライセンサーを通して既存販売企業にライセンシーの販売情報等を提供することを特許流通アドバイザーが提案し、成約に至った。
断面図





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(財)高知県産業振興センター 特許流通アドバイザー 吉本 忠男
TEL:088-846-7087/FAX:088-846-2556/E-mail:yoshimoto-ad@adp.jiii.or.jp