特許流通支援コーナー

9月号では「発明の対価 進む制度化」のご紹介と「特許流通成功事例」(バイオマスガス炉用粉粒体原料供給装置)をご紹介します。

発明の対価 進む制度化

訴訟相次ぎ企業も「防衛」進まぬ高度化 残る頭脳流出の懸念

 企業の研究者が仕事で発明した「職務発明」に対し、製品の売上高や特許収入などに応じて対価を支払う制度が広がっている。 報酬に不満を抱いた研究者から、十分な対価を求める訴訟が相次いだためだ。昨年改正された特許法では、企業と研究者が協議して合理的な制度を導入するよう促しており、 報酬の上限を撤廃した企業も多い。しかし、報酬額を適切に評価するには課題も多い。(企業や研究機関の発明対価の上限:上限なし68%)

職務発明の対価をめぐる主な判決や和解
ビデオディスク装置
(オリンパス)
03年4月 最高裁判決 「社員は社内規定を超える対価を請求できる」と初判断
光ディスク読み取り技術
(日立製作所)
04年1月 控訴審判決 対価約1億6,500万円
(支払い約1億6,300万円)=上告中
青色発光ダイオード
(日亜化学工業)
04年1月
05年1月
一審判決
控訴審和解
対価約604億円 (支払い200億円)
対価約6億円 (支払い約8億4,300万円)
人口甘味料
(味の素)
04年2月
04年11月
一審判決
控訴審和解
対価約1億9,900万円(支払い約1億8,900万円)
対価1億5,000万円
フラッシュメモリー
(東芝)
06年7月 一審和解 対価8,700万円

 日本企業の多くは従来、社内の研究者の発明に報いるルールを持っていなかった。
 例えば、日亜化学工業で青色発光ダイオードを発明した中村修二・米カリフォルニア大教授は、在職中に2万円を受け取っただけだ。 東芝でフラッシュメモリーを発明した舛岡富士雄・東北大教授は退職後に600万円を支給された。
 中村、舛岡両氏は、自らの発明により企業が手にした膨大な利益を、発明者自身にも適正に配分するように求め、 それぞれ所属していた企業を相手取り、訴訟を起こした。
 しかし、裁判所も確たる答えを持っていたわけではない。中村氏の訴訟では、東京地裁が200億円もの対価の支払いを日亜科学に命じた後、 2005年1月の高裁段階での和解では、8億4,400万円に減額されるなど、「迷走」と言える状況を示した。

 発明者からの相次ぐ提訴を契機に、企業側も、明確なルールを定めるようになった。
日立製作所では
1特許を活用した製品について売上高などに比例して年3万円以上で上限なし
2特許料収入に比例して年10万円以上で上限なし―の金額を支払う仕組みだ。三菱化学は5年間の利益が60億円以上の発明に、2億5,000万円を上限として報奨金を支給する。  05年4月の特許法改正で、企業と従業員が協議して対価の合理的な算定法を定めるよう求めたことも追い風となり、 特許庁が今年1月に行った調査(全国1,093法人対象)によると、8割以上の企業や大学・研究機関が新たな職務発明規定を導入したという。
 改正後の06年7月に和解した舛岡氏と東芝の事例では、対価は8,700万円とされた。算定基準については双方とも明らかにしていないが、 裁判所が各企業のルールの合理性を判断する流れとなっていることなどから、「東芝の現在の報奨制度を参考にした可能性がある」(企業法務に詳しい弁護士) との見方もある。

 企業側がルール整備を進めたのは、裁判で巨額報酬を強いられることを避けるほか、報酬に不満を持った研究者が韓国や中国の企業に転出し、 半導体などの技術流出を招いたことへの反省もある。企業防衛の色彩が強いことから、実際の報酬は、驚くような高額にはなっていないようだ。 (発明報奨制度の導入例:ソニー、船井電機、セイコー、エプソン、三菱化学、コスモ石油、武田薬品工業など)
 パイオニアでは、05年度に1,000万円以上の報酬を受け取った研究者が10人近くいるが、最高額でも約2,500万円という。 武田薬品工業は05年度、延べ346人に計1億7,893万円を支給した。さらに、デジタル家電製品では半導体一つに約100の特許が存在し、 プラズマテレビは数百件という特許の塊で、研究者1人あたりの貢献度を算定するのは難しい。独自技術を守るため、情報公開につながる特許をあえて取得せず、 中核部品を「ブラックボックス」化する企業が増えた点も、研究者にとっては「逆風」と言える。

 ルールを明確にすることが、思わぬ影響を及ぼすこともある。
 ある大手電機の研究部門のトップは「新たな制度で、研究者が金になる研究に傾斜することになれば、長期的には競争力の劣化につながる」と懸念する。
 また、今後の訴訟では、労使協議に基づく報酬ルールが確立されていれば、裁判所が合理的と判断するケースが増えるとの観測も多く、 「研究者側に勝ち目はほとんどない」(日亜化学や東芝の訴訟を担当した升永英俊弁護士)との声もある。訴訟に期待できないとなれば、 海外への流出を招く事態にもなりかねず、各企業には、ルールの更新や運用面での工夫が求められる。

 ※この記事は読売新聞社の許諾を得て転載しています。

特許成功流通事例
バイオマスガス炉用粉粒体原料供給装置
経緯

 三重大学教授は、長年研究開発を行っていた「複合型自然エネルギー発電技術」に関して、植物などの生物体(バイオマス) を利用したバイオマスのガス化による発電システムの実用化に目処がついたので、三重TLOから特許出願した。ライセンシーである (株)松井鉄工所は木質バイオマスガス発電の研究・実用化開発を行っていたところ、三重TLOから案件紹介された本特許技術に興味をもち、 三重TLO特許流通アドバイザーからライセンスのサポートを受けて、特許権実施許諾契約の締結に至った。

【成約日】平成17年2月3日

自社技術の展開を模索

大学の研究成果との出会い

特許流通ADがライセンスサポート


成 約
技術概要
利用技術: 特開2005−179405
「バイオマス変換式ガス発生炉用粉粒体原料供給装置」
概   要:

本装置はガスを発生させるための原料である植物性粉粒体として、間伐材等をオガ粉にし、 このオガ粉を炉内に詰まりを生ずることなく円滑に供給できるようにしたことにより、優れた安全性を持って安定して操業可能なバイオマス変換式ガス発生炉用の 粉粒体原料供給装置である。本特許技術によりバイオマスガスを燃料とし、発電装置から電力や熱を供給できるシステムが得られる。

企 業
導入企業: 株式会社松井鉄工所(三重県伊勢市)
提供企業: 株式会社三重ティーエルオー(三重県津市)
販売状況

地方自治体と企業との第3セクターにパイロット装置を納入。

成約に関するコメント

(株)松井鉄工所は、自社技術の展開を模索し、平成12年頃から木質バイオマスについて調査・研究をしていたところ、 三重TLO特許流通アドバイザーから案件紹介を受け、本特許技術に可能性を見出した。(株)松井鉄工所は三重大学の発明者からの技術指導を得て、 パイロットシステム装置を完成した。現在、大学発明者と共同研究を実施しながらバイオマスガス発電用小型エンジンの開発を実施しており、 システムとしての実用化の目処も立っている。


バイオマス変換式ガス発生の工程を示すシステム構成図





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(財)高知県産業振興センター 特許流通アドバイザー 吉本 忠男
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