大学教育における助産師の育成
高知女子大学看護学部は、昭和27年に4年制大学の看護教育機関として日本で最初に開設され、その間、看護師、保健師・養護教諭の育成をしてまいりました。平成19年度からは、「助産課程」が誕生しました。
助産師とは厚生労働大臣の免許を受けて、「助産または褥婦もしくは新生児の保健指導を業とする女子を指す」と、法律で定められており、妊娠から出産、育児まで母子の健康を守る活動をします。特に、分娩時には、医師の指示を必要とせず、自らの判断で「へその緒を切り、浣腸を施し、その他助産師の業務に当然付随する行為」などの助産および助産業務ができます。そして、分娩後は新生児のケアや保健指導、授乳教育や育児相談など幅広く母子をサポートします。助産師は生命の誕生に深く携わる魅力的な職業といえます。さらに医療に関する高度な知識と技術が要求される職業でもあります。また、妊娠・分娩・産褥という範囲だけでなく、思春期から老年期までの女性の性・生殖に関わる「女性とともにある」専門職として、性教育、不妊相談、家族計画、更年期への支援といった様々な分野でも関係機関と連携し、包括的な活動を行っています。
そのため、妊娠・分娩・産褥経過の的確な診断や安全な分娩介助ができるような助産師、また、生命を愛おしみ、性に向かい合え、女性やその家族の心理に寄り添えるような助産師の育成を目指しています。
県民・社会が支える出産・育児
高知県の母性保健の現状をみると、もう少し、安全・安心して出産・子育てができる環境になるとよいと思っています。
高知県の出生率(H18)は人口千人あたり7.6で、全国平均の8.7よりも低く、ワースト3位。出産できる施設は22施設と少なく、それは市内に密集しています。少子化対策として、出産しやすい環境づくりが必要でしょう。
出産後の入院期間は経膣分娩5日間程度、帝王切開手術7日程度と短縮し、母親は育児に自信のないまま退院する場合や、精神的サポートが必要なケースが存在しています。助産師は、自信を持って育児ができるよう親たち自身のエンパワーを引き出し、いつでも相談に対応することが必要です。
異常の早期発見に加え、適切な時期に予防のための保健指導を受ける機会として、妊婦健康診査の一部が公費で受けられます。H19年1月に、公費負担分が2回から5回と増えました。しかし、妊婦健診は妊娠23週(6ヵ月)まで4週に1回、妊娠24週〜35週(7〜9ヵ月)まで2週に1回、妊娠36週〜分娩予定日まで1週に1回であり、施設によって異なりますが、1回の妊婦健診費平均5千円、計10数万円になります。経済的負担の軽減のための支援として、例えば、高知県外では妊婦健診費5回以上の補助をしている行政、出産・育児支援金を提供する企業もあります。
男性が妊娠から育児を通じて、夫として、父親としての役割を担うことが重要です。例えば、妊婦健診への付添いと胎児への関心、出産時の精神的サポート、育児の実施など、妻とともに一緒に行い、支援することが大切です。男性がこれらの役割をとれるには、まず、公的時間を取得できる職場環境が重要だと思います。
健やかな母性・父性を育む
次に、高知県の性感染症(STD)は全国の現状と同様に、特に10代、20代に多く認められます。しかし、高知県の場合、その年代のSTDは、男性よりも女性の割合が5〜10倍と多い状況です。そして、人工妊娠中絶数は、全国平均9.9(女性総人口千人あたり)よりも、高知県が13.5と高く、どの年代においても全国平均よりも高率です。
これらの課題に対しては、生命の誕生や性・生殖に関する自己決定など価値観の転換の視点から、幼児期、思春期の子どもたち、そして、成熟期の女性、男性に対して、性に関する教育、ヘルスプロモーション、ピアエデュケーションの普及等が大切です。そのためには学校教育はもちろん、職場の健康管理者と連携を図り、健全な父性・母性を育むことが必要です。
助産師は高度医療化に伴って、女性とその家族の視点に立った質の高い助産・看護が求められています。このようなケアを提供できるよう、女性とその家族のご理解・協力、そして、県民、医療・保健施設の医療職のみなさまのご理解・協力をいただき、より一層、教育・研究に努め、貢献していきたいと考えています。