研究概要
現在、タンパク質分解、糖質、脂質に関連する酵素は、三大消化酵素として食品、医薬品並びに化学工業の分野などで積極的に利用されています。種々の酵素の特異性を利用して付加価値の高い物質を生産することは有益であり、効率的に生産を行う手段の一つとして、有機溶媒などの疎水的な環境下において酵素反応を進行させることが考えられています。また、工業的には酵素を不溶性の粒子(担体)に固定化し、酵素の回収・再利用を容易にし、かつ反応塔内に充填することにより連続的な物質生産を行うことが望まれています(図1)。
高知高専に着任以来、研究テーマとして疎水的環境下における固定化酵素反応を選定し、次に示す内容を中心に研究を展開しています。
固定化酵素ゲル担体の開発
非極性の有機溶媒中に界面活性剤を溶解し、ごく少量の水を加えることによって形成される分子集合体(マイクロエマルション)が天然高分子(ゼラチンなど)の添加により容易にゲルとして組織化することを見出しました(図2)。この種のゲル組織の優れている点は、ゲル内に親水的な雰囲気を提供しつつ、疎水性の高い有機媒体に利用できることです。
試みに、脂質関連酵素(リパーゼなど)をゲル内に固定化し、エステル類の合成反応に用いた結果、酵素活性が長時間にわたり安定に発揮されることが解りました。これより、本法による固定化酵素反応が工業的に利用できる可能性が認められました。
現在は、界面活性剤、天然高分子、酵素のそれぞれの種類を変えて、本法の最適な反応条件の探索を行っています。
気固相型バイオリアクターの開発
一般に酵素反応は、液相あるいは固液相の反応系で行われます。研究室では、次世代型のバイオリアクターの開発の観点から、気相中での固定化酵素反応を検討しております。この研究の興味深い点は、反応媒体として原料を含む気体(窒素など)を用いることであり、酵素を利用できる分野の拡大が図れることです。
現在は、反応装置の設計、モデル反応の選定などを中心に鋭意研究を進めています。
研究の副産物
研究を進める上で反応前後の原料や生産物の定量を行う必要があり、例えばオリーブ油中の複数のトリグリセリドの分離、定量を例として挙げることができます。このような分析を通じて、研究室に技術が蓄積され、様々な物質分析を行う上で時間短縮ができるようになり、上述の研究を展開するための大きな副産物となっています。