情報プラットフォーム 2010年2月号 No.269

トマト特集

地域への雇用の場を確保!
60歳からの挑戦

高速道路を使って高知市内から約3時間半。三原村のふれあいの里の中に『有限会社四万十みはら菜園』はある。

参入のきっかけ

「カゴメに出荷する大規模ハウスでトマト栽培を行う会社の経営をお願いできないか?」小八木社長に三原村の関係者から打診があった。「縫製工場をやっていた自分にはあまりにも畑違い。」「ノー」と答えたが、再三の誘いがある。企業経営の経験が地域の活性化に役立つなら…と「年金でゆっくりくらそう」と約束していた奥さんとも相談し、個人で2000万円を出資し、平成15年4月に有限会社四万十みはら菜園を設立することになった。

ハイテクハウス

施設は、農場というより植物工場を思わせるもの。養液の供給、温度管理など機械が自動で行い、休日のトラブルも自動的に担当者に連絡が届く。職員が対応できない場合は、メーカーからの遠隔操作で対応できる仕組みもできている。環境問題を考え、加温用のボイラーは、LPガス。この排ガスをCO2の供給に利用する。マルハナ(円花)バチを利用した受粉、農薬は極力控えるなど環境に配慮した栽培システムが確立されている。まさにハイテク・グリーンハウスだ。

最大のピンチ

従業員に農業経験者は全くいない。社長を含む3人の役員が、先進地で研修を受けた。昼間は、作業員として働き、夜は、3人で作業方法の確認と、三原でどう取り組むべきか協議した。この研修を通じてトマト生産のノウハウを学んだ。カゴメからも農業の専門家を雇用すべきではというアドバイスがあったが、コストを抑えるためにあえて専門家は雇用しなかった。従業員は、職安を通じて雇用したパート職員40名に栽培担当、出荷担当、社長の3人。専門家なしでのスタートである。周囲からは素人経営を危ぶむ声も聞こえていた。

そんな四万十みはら菜園に早速、危機が襲いかかる。8月に定植したトマトの一部に「青がれ病」が発生したのだ。地域には珍しい近代的な施設ができたので、訪問者も多い。ここからの感染をまず疑った。だが、原因は用水にあった。 ここから社長の眠れない日々が続いた。もちろんカゴメにも、幡多農業振興センターにも相談した。病気にかかったトマトの株だけ処分することも考えた。これなら一定の収穫はできる。しかし、既に他の株も感染しているかもしれない。それ以上に「病気のトマトを出荷している。」そんな誤った噂が広まっては今後の信用をなくす。カゴメにも迷惑をかける。迷った末、全株の植え替えを決断する。額にすると約5000万円の損失だ。

従業員を集め、状況を説明し、お詫びをし、何度も頭を下げた。「給料が払えない。しばらく休んで欲しい。」そのとき、従業員から「自分たちも頑張るから仕事を続けさせて欲しい。」「仕事をやめないで欲しい。」という声があがった。「このときは、胸が熱くなりました。『この社員のために頑張りたい!』改めてそう思いました…。」こみ上げてくる思いをぐっとこらえながら小八木社長は話してくれた。

奇跡の黒字

このピンチで、従業員のチームワークが高まった。四万十みはら菜園は、再度の定植から3ヵ月後、生産計画の180%増という偉業を達成することになった。 先行している農園の例では、1年目は赤字、2年目で収支が均衡し、3年目でやっと黒字がでる状況だ。みはら菜園がいかにすばらしいかがわかる。その後も安定した経営が続いている。

約束を守る・平等に評価する

会社は、農業であるにもかかわらず土日が休日だ。「生産性が上がり予定している作業が5日でできれば、土日を休みにする。」この方針に従業員が応え、1年目から土日の休日が実現した。次の目標は、「カゴメグループの中で1番になって海外旅行に行こう。」だ。この夢も2年目に達成し、全従業員で韓国に出かけた。「うちは出勤率や勤務成績などで全ての従業員を公平に評価している。利益が出れば、ボーナスも支給しています。」と小八木社長は話す。

秀品率トップ

カゴメグループの中で、みはら菜園が秀品率でトップクラスだという。秘訣は、早期発見、早期対応できる従業員のレベルの高さだと社長はいう。

世界のトマトを知るカゴメの幹部からは、「おそらくここが世界一の衛生管理の行き届いたトマトハウスだと思う。」と太鼓判をもらっているという。とにかくきれいだ。 現在の従業員は、三原村のほか、宿毛市、四万十市、大月町から約50人。この地域にとっては大きな働く場となっている。四万十みはら菜園からは、三原村農業公社に設備の使用料として、毎年、4500万の支払いを行っている。返済額の一部は、村の産業振興にも役立っていると聞く。

課題と抱負

四万十みはら菜園のトマトは、100%カゴメブランドで、出荷していたが、一部、県内のスーパーにも卸しはじめた。「少しずつではあるが自社ブランドの商品や加工品にも取り組みたい。」また、「私はもう70歳になる。この会社をきっちり事業継承しなければならない。」と課題も明確だ。

仕事柄もあってか小八木社長は数年前から毎日トマトジュースを飲むようになったという。「トマトジュース1杯で約4個分のトマトを摂取したことになるようで、定期診断でも尿酸値がぐっと下がりとても体の調子が良くなった。」と笑顔で話す。三原地域を盛り上げていくために小八木社長には、引き続き頑張っていただきたい。

社長 小八木喜尊さん
社長 小八木喜尊さん
有限会社四万十みはら菜園 〒787-0802
高知県幡多郡三原村宮ノ川1270番地11
TEL 0880-31-7781
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