情報プラットフォーム 2010年2月号 No.269

トマト特集

こだわりの味を全国へ!

いま、高知の高糖度トマトが注目を浴びている。糖度の高いフルーツトマトは全国各地で生産されているが、本県は園芸県として産地が多いことを背景に味のレベルが高く安定した供給ができるのが強みで、メディアでも「高知は日本のトマト王国」と紹介されることもある。そんな王国を支える一人が「おかざき農園」代表の岡崎秀仁さん(50)。

フルーツトマトの味に魅了されて栽培を始め、今では90アールに約4万本のフルーツトマトを栽培する大規模農園にまで成長させた岡崎さんを高知市春野町に訪ねた。

メロンからの転身

もともとは、メロン栽培農家。父親の敬蔵さんが県内で温室メロン栽培の先駆者的存在だったこともあり、その後を継いで23歳の時から約20年、メロン栽培を手がけてきた。

しかし、15年目頃から当時人気が出始めていたフルーツトマトの濃厚な味に衝撃を受け「もっとおいしいトマトを作りたい」「日本一甘いトマトを作りたい」そんな決意を胸に2002年からフルーツトマト栽培に取り組んでいる。

糖度を上げるためのノウハウはメロン栽培で身に付いている。さらにトマトの勉強もし、自信をもって臨んだが、1年目は大失敗だった。フルーツトマトは水分を控えることで味が濃縮され糖度が高くなるのだが、水分を抑えすぎると子孫を残せなくなる。スタートのこの年、糖度を高めることばかりに意識が行き、シーズンの約2ヵ月間、収穫ができなかった。

この失敗を教訓に試行錯誤を重ね、ただ単に甘いだけでなく、トマト本来の持つ酸味を生かした甘みと酸味のバランスが取れたこだわりのトマトが作れるようになった。忙しい収穫時には睡眠時間が3時間という日も続くが、「その年、最初の実が順調に付いた時や、お客さんから『おいしい』と言ってもらえた時の喜びは、何にも代えがたいです。」と岡崎さんは話す。

生産から料理まで

一般的なトマトの糖度は4~5度だが、フルーツトマトは8~14度と2倍以上の糖度がある。夏場、トマトは水を与えないと枯れてしまうので、人為的に水分を抑え、糖度を上げることはできない。このためフルーツトマトは冬の寒い時期にハウスの中で温度調整をして育てることになるが、設備面で費用がかさむ。また、水分を抑えることにより収穫量も少なく、通常のトマトに比べ値段も高い。採算面から栽培をやめる農家も全国的に少なくないが、岡崎さんには大きな夢がある。

それは、フルーツトマトの生産から加工、料理までのすべてを「おかざき農園」で提供したいというものだ。野菜の栄養や料理法などの知識を身につけるため、妻、息子とともに親子3人で「野菜ソムリエ」の資格を取得している。講習を受ける過程で、人との接し方や流通についても学び、「それまでは市場の担当者に渡したら、後はお任せという感覚でしたが、今ではその先の消費者に届けるという意識の方が強くなりました。極力、木で熟らそうとか…。」受講時は、繁忙期と重なり、十分な睡眠時間も取れなかったが、「朝まで仕事をして、そのまま受講している人もいました。何かをやりたい人は忙しいもので、忙しいからいろんな欲求が生まれるんです。頑張っている人を見て、自分も頑張らんといかんと思ったものです。」と振り返る。

加工品開発は2年前から取り組み始めたが、既に全国的に高評価を受けているものもある。岡崎さんより1年早く野菜ソムリエの資格を取得した妻の美香さんが手がける「野菜ソムリエ美香の食べるトマトジュース」。青果を提供できない夏場に、いろいろな料理に使ってもらおうとの思いで発案。塩も砂糖も水も使わず、おかざき農園のフルーツトマトを100%無添加で使っている。ジュースとは言っても、とろりとした感じで、まさに「食べる」という口当たりだ。糖度は11度以上もあり、これまでのトマトジュースの概念を覆すような逸品に仕上がっている。東京の高級スーパーマーケットや青果専門店にも自ら販売に出向き販路も拡大。県内外にファンがいるが、NHK大河ドラマ「龍馬伝」の影響もあり注文はさらに増えそうだ。

今季は糖度が13度以上のトマトだけで作ったジュースも製造。500ミリリットルで5,000円と高価で、岡崎さん自身「青果の品質のアピールのために作ったけれど、売れるとは思っていないです。」と笑うが、おいしいもの作りをとことん追求するこの姿勢こそが、「日本一甘いトマトつくりに挑戦しよう」とスタートした岡崎さんの原点だと感じた。

取材の最後に「ほかの生産者の方に何かアドバイスはないか」と質問したところ、「自分で売りに行き、消費者の声を聞くことが大事」との答えが返ってきた。たとえば、東京には全国からおいしいものが集まるため、担当者や消費者が求める味のハードルは高い。厳しい要求を受けることもあるが、そのひとつひとつをクリアし、完売できた時は大きな自信になるという。

おいしいものをつくるため、消費者の喜ぶ顔を見るために努力を惜しまない姿勢は、過酷な給水制限を受けながらもおいしく育つフルーツトマトに重なった。

代表 岡崎秀仁さん
代表 岡崎秀仁さん
おかざき農園 〒781-0315
高知市春野町東諸木1445
TEL 088-854-8982
FAX 088-854-8982
E-mail:okazakinohen-2006@tuba.ocn.ne.jp