情報プラットフォーム 2010年6月号 No.273

ぷらっとウォーク

今夜の催し物を知りたい

何処でもホテルのフロントには沢山の三つ折りパンフレットが置いてある。常設展示の美術館や博物館ならば、「何処に何があるか」、「何処でどのような特別展があるか」を知らせるに有効である。しかし、宿泊客が望んでいる「お知らせ」はこれ以外にもあるように思える。「今晩、何処かで、何かないかな」、「明日、何処かでマチネーはあるだろうか」といったことである。今日は土佐の心遣いが感じられる簡単な取組みの提案をする。

ヨーロッパの中規模の都市での十数年前の経験の幾つかを話そう。訪れた町で、ホテルの近くで今晩何か催し物はないだろうかと探すことがある。フロントで尋ねると、その地域で開かれる音楽会、展覧会など、一週間先位までの予定表が置かれている。昔のことだから感圧紙のコピーだったように思う。会場への交通はフロントが教えてくれた。

思いがけない拾いものの例の幾つかを示す。その町の由緒ある教会で、グレゴリオ聖歌を聴き、中世の時代に浸ることができた。別な機会には、ホテル近くの中学校講堂で、地域オーケストラの演奏を聴いたこともある。日本にこのようなオーケストラはあるだろうかと考えた。また別の時に、別の街で、そこに里帰りしていた著名なハプシコード奏者の演奏を、コミュニティー・センターで聴いた。ハプシコードを間近で見るのは初めてであった。また、言葉のハンデを感じることがないパントマイムも楽しい思い出になっている。このような思わぬ出会い旅は、フロントに置かれている一枚の予定表のお陰である。

住んだことのある東京、札幌、それに高知を比較する。東京では、様々な催しが毎日何処かで開かれている。「多すぎてどれも選べない、どれにも行かない」、「家に帰り着くのが11時過ぎと遅くなる」が首都圏である。札幌でも、高知でも、規模が小さく、演奏会などの機会が少ない。しかし、却ってそれが聴きに行く機会を増やすことになった。そして、知らなかった演奏家との出逢いが新しい発見につながっている。残念ながら、札幌でも、高知でも、他の都市でも、ヨーロッパで見かけたような案内をホテルに置いていない。

四国へんろ道沿いの郵便局やガソリンスタンドには、手作りの地図が置いてある。市内のホテルに同じような感覚で、イベント案内一覧表は置けないものだろうか。その時は「ぐるりんバス」や「MY遊バス」の時刻表も忘れないようにしたいものである。高知は適正な規模の町である。何処かで何かが企画され、興行が行われている。高知での演奏会・イベントの会場は、県民文化ホール、かるぽーと、高新画廊だけではない。独自の企画を展開している小粒だけど輝くようなギャラリーも多い。例を挙げれば、星ヶ丘アートビレッジ、ほのまるハートアートギャラリー、白木谷国際現代美術館などがある。

高知新聞には、朝刊の「あすの催し」や夕刊の「伝言板」があり、さらに「K+」のような月刊誌もある。情報の一元化はそれほど困難ではないだろう。観光関連の協会、NPO組織、あるいは高知新聞自体が受け皿かは相談すればよい。歴史・文化や風物・物産だけがアピールできる観光資源ではない。お接待の心が高知最大の観光資源である。手頃な規模の高知だからこそ、毎日、ホテルに届く今晩のイベント情報に価値が出てくる。通り過ぎる観光客への、高知からの心配りの配信である。思わぬ出会い旅の演出でもある。お客様とフロントとの会話が弾むきっかけとなれば素晴らしい。これは「土佐・龍馬であい博」の後も地道に続けて行ける高知のお接待の一つになる。

ご感想、ご意見、耳寄りな情報をお聞かせ下さい。鈴木朝夫<s-tomoo@diary.ocn.ne.jp>