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高知県中小企業支援センター
図でよくわかる機械材料学
コロナ社発行(2010/2/22)の表記の著書を送ってくれたのは、(わたなべ×みうら)2である。すなわち、渡辺義見、三浦博己、三浦誠司、渡邊千尋の4氏である。いずれも東京工業大学大学院総合理工学研究科で工学の学位を取得した方々であり、それぞれが名工大、電通大、北大、金沢大で教鞭を執り、研究に携わっている。「諸先輩の書かれたたくさんの機械材料学の本があるが、これらと一線を画すため、図面を多用し、機械工学科の学生さんにも理解しやすいように執筆したつもりです。全員で全文章を書いたものであり、苦労は単著以上になりましたが、統一感のある教科書に仕上がっているものと思います」との手紙が付いている。巣立っていった人々の成長ぶりに感激いっぱいである。
まず、この本の2つの特徴を示そう。機械を構成する材料の大半は金属材料であることから、全ての材料を網羅的に書き並べるのではなく、対象を金属材料に絞っているのが第1の特徴である。220頁の手頃な分量であるが、表題のように図の数は231に達し、これが第2の特徴である。なお、数式は152あるが、次のステップへの基礎になるものである。
全10章は、第1章「機械材料とその製造プロセス」、第2章「結晶構造」、第3章「格子欠陥」、第4章「拡散」、第5章「熱力学と相変化」、第6章「平衡状態図」、第7章「転位と材料強度」、第8章「材料の強化方法」、第9章「材料評価法」、第10章「材料各論」から構成される。それぞれの章の終わりには適切な演習問題が付いている。
材料の性質は材料の成分と材料組織によって決まり、材料組織は材料の成分と製造プロセスで決まる。製造プロセスとは、例えば、鋳造、熱間加工、冷間圧延、焼鈍・時効処理などと続く一連の工程であり、部品形状に作り上げるだけが目的でないことが知れる。
機械材料として最も重要な材料強度を転位との関わりで述べた第5章には、15%に当たる35頁を割いており、第10章の「材料各論」の20%の45頁に次いでいる。
用途に応じて様々な材料強化法が使われる。加工硬化、結晶粒微細化、固溶強化、析出強化、複合強化などが選択肢である。また、種々の環境下で使われる機械材料は、引張強度試験だけではなく、疲労、クリープ、衝撃、摩耗などの特性を評価する必要がある。
自動車などの軽量化に伴い、鉄からアルミニウムへ、アルミニウムからマグネシウム、無機材料・有機材料へ、さらに複合材料への流れが生まれている。第10章では、金属材料から離れて、複合材料にも言及している。複合材料の重要度が増している証拠である。熱力学や相変化では、自由エネルギーの理解が、そして平衡状態図の基本を知る必要がある。昔、何故「自由」なのかと疑問に思った。図書館で、書店で熱力学の本を読みあさった。ある一冊の本に、自由エネルギーに対して、束縛エネルギーも定義され、疑問が一気に解消したことがある。第5章にはそれがある。若い頃の懐かしい思い出である。
著者4人が電子メールで、時には札幌、東京、金沢、名古屋から集まり、オフ会を開いて協議している。普通は著者の得意な分野の記述が詳細になりがちだが、偏りのない均等な分野配分になっていることが第3の特徴と云える。材料の環境問題や破壊靱性への言及の物足りなさは感じられるが、最も大変な作業は割愛だったのではと想像できる。そのことが全体を引き締め、スマートな仕上りにしている。機械系だけではなく、材料系の学生にとっても、もの作りに関わる多方面の人々にとっても座右の書として役立つだろう。

