私たちは、地域の企業を応援します。
財団法人 高知県産業振興センター
高知県中小企業支援センター
活力は土佐沖の海底より出づ
楽しい夢を見た。高知から元気と活気を送り出すのである。鉱物資源に恵まれた「黄金の国、ジパング」復活の夢である。深海海底下400mに眠っている膨大な資源、メタンハイドレートの掘削技術の発明が夢の始まりである。
ある日、県内企業のZさんから「この特許出願書を見てくれんろうか」と相談を受けた。メタンハイドレートからメタンを取り出すことの難しさを多少は知っていたが、従来の「加熱法(温水圧入)」、「加熱法(抗井加熱)」、「減圧法」、「分解促進剤注入法」のどれとも異なっていた。命名すれば「加熱法(掘削先端加熱)」である。「優れた特許だからといって、それが直ちに事業に結び付くとは限りませんよ」と説明した。
気体包接水和化合物と言われるように、5.75個の水分子が作るカゴ構造の中に、1個のメタン分子が収まっており、これが立体的に連続して、規則正しい結晶構造を作っている。高圧・低温の安定領域は、例えば[1気圧 −80℃]、[10気圧 −30℃]、[50気圧 6℃]である。常温・常圧下でも表面が薄い氷で保護されるために比較的安定で、急に燃え出さず、天然ガスのように自噴することもない。この性質が困難を作り出している。何れの掘削法も、メタンを分離した途端に水分が凍結し、排出管を閉塞させるのである。
「わしの掘削先端加熱法は、酸素だけを供給して、メタンを局所燃焼させる『その場加熱法』ながじゃ。メタンを効率よく取り出いて、分離してくる水も、堆積汚泥もその場に残しちょく。地上や海底に汚泥を出さんようにし、環境汚染がないがよ」とZさんは説明する。「加熱範囲が際限なく広がらない局所的な加熱法で、メタンを取出すに必要な最小限のエネルギーで済むのですね」、「そうじゃ!!」と会話が弾んだ。
「工事が目的の事業と批判された高知新港(FAZ)やが、今となっては先見の明のある先行投資ちゅうことや」、「2006年1月に、地球深部探査船“ちきゅう”がFAZに寄港し、一般公開があったときは興奮しました。海洋コア総合研究センターを高知大学に誘致できたのもFAZがあるからこそですね」、「高知龍馬空港も2,500mになっちゅう。高速道から伸びる高規格道が、FAZを、空港を結んでくれるし」と夢を膨らませた。
南国市・高知市を中心とする香長平野は、平坦な広い土地を確保し易く、上記のように交通の要に位置しており、研究支援設備などの立地に最適である。試験掘削、実証試験は勿論、実用操業でもFAZは様々な役割を担うことが出来る。
メタンハイドレートは高知県沖の南海トラフなどに大量に存在し、その賦存量は日本の天然ガス消費量の約100年分に相当すると言われている。温室効果ガスとしての危険性が指摘されているが、海底の泥火山からは常にメタンが放出されており、心配は無用と分かっている。メタンはCO₂の発生量が少なく、環境の視点からも理想的である。
「東京のY特許事務所のXさんから、今がチャンスやきと、国が公募している政策提言の申請用書式を送って呉れちゅう。どういても、東京での打ち合わせに同行してくれんかよ」、「高知の立地条件を拠り所に、発明が高知から出ていることを強調して、高知に拠点を置くような構想ですね」、「統括責任者を誰に頼もうか?」、「高知に縁があり、海底探査の実績を持つWさんしか居ませんよ」、「最適任やか」と2人の意見が一致した。年頭に当たり、一富士(無事)、二鷹(高)、三茄子(成す)の初夢を披露させて頂いた。

