情報プラットフォーム 2011年6月号 No.285

特集 お茶関連産業

ブレンドからブランドへ「土佐茶」の挑戦JA全農こうち 土佐茶カフェ

はじめに

荒茶(原料茶)の価格低迷、生産者の高齢化、茶園の老園化など厳しい生産環境のなかで、土佐茶の消費拡大や販路拡大の取り組みがここ数年広がりを見せている。従来ブレンド茶用の原料茶の地位に甘んじていた「土佐茶」のブランド化に向けた挑戦を「全国農業協同組合連合会高知県本部(JA全農こうち)」と「土佐茶カフェ」の取り組みを中心に伺った。

「土佐茶」の現状と取り組み

静岡県などへブレンド用原料として荒茶のまま出荷していた高知県のお茶は、緑茶の消費減退や、原産地表示の厳格化などにより、価格が低迷し、平成11年のキログラム当たり2,584円から平成21年には、1,449円と半値近くまで低下した。このままでは経営を継続していくために必要な価格の1,413円を割り込むのではないかと危惧されている。

「茶」は、「ユズ」と並んで高知県の基幹品目に位置づけられている作物であるが、こういった価格の低迷と、生産者の高齢化や、急傾斜地で小規模といった栽培条件の不利性などが相まって、平成21年には栽培面積がピーク時の半分に、荒茶生産量も3分の1まで激減し、高知県内の茶産地は、危機的な状況となっていた。

こういった、「土佐茶」の現状を打開し、茶産地を再生したいということで、近年、茶農家や関係者は様々な取り組みを行ってきたが、土佐茶振興対策が高知県産業振興計画に盛り込まれたことで、平成21年度から官民を挙げた土佐茶産地の再構築の取り組みが本格化した。

その一端を紹介すると、各産地のJA、市町村、茶生産団体からなる茶業振興会や、JA全農こうち、JA高知中央会、県茶商工業組合、県の農業振興部を構成メンバーとする、「土佐茶販売対策協議会」が、春の「新茶まつり」、秋の「土佐茶まつり」、小学生への出前授業、テレビCMの放映などのPR・試飲活動、高知女子大学(現高知県立大学)生活デザイン学科の井本研究室と連携した公開講座の開催、土佐茶のPR拠点施設「土佐茶カフェ」の整備、販売先にあわせた商品化や県内量販店等への販路拡大などである。

また、さきの井本研究室では茶業試験場との共同研究事業として、消費者の嗜好にあった土佐茶の商品開発に取り組み「茶楽々(ちゃらら)」を開発、試験販売を行っている。

さらに全国的にも珍しい発酵茶である、大豊町の碁石茶の生産者らによる成分・効能に関する研究や販売促進の取り組みもある。

「JA全農こうち」の取り組み

「JA全農こうち」では高知県産の茶葉を100%使い、程よくブレンドした4種類の製品茶や3種類のティーバッグ、5種類のペットボトル茶、業務用パウダーを製造販売している。従来「荒茶」での取り扱いがほとんどであったが、荒茶の厳しい販売状況を受けて、平成21年度から新しく農産販売課というセクションを設け、製品茶とペットボトル茶などの開発販売に力を入れている。今年4月には二番茶を紅茶に加工した新製品「土佐の紅茶」の販売も始めている。2010年高知県産の荒茶生産量は約347トンでその4割ほどの約140トンを「JA全農こうち」で扱っており、そのうちの40から50トンが製品茶など、付加価値を付けた形で販売されている。農産販売課の池田課長は、「主な販売先は県内の量販店や道の駅など。土佐茶の消費拡大を図り、生産者のためにも、できるだけ良い価格で荒茶を買い取れるようにしたい」という。

平成22年度には高知県競争力強化生産総合対策事業費補助金などを活用して仕上茶加工施設を整備しており、新規に導入したボールミル機(茶葉をパウダー状にする機械)を使い、冷水で飲めるお茶のパウダースティックの開発に取りかかっている。茶産地が厳しい状況にあるなか、土佐茶の流通販売における「JA全農こうち」の役割は一層重要になっていると感じた。

「土佐茶カフェ」の取り組み

「土佐茶カフェ」は高知市の中心商店街帯屋町二丁目に土佐茶を知ってもらい、飲んでもらい、販売するPR拠点施設として平成22年12月26日オープンした。帯屋町公園側にもテラス席と入り口を持つ、商店街には珍しい両面店舗。事業主体は障害のある人の就労を支援する「NPO法人ワークスみらい高知」である。

取材におじゃましたのは、平日の午後3時、通常の飲食店ではアイドリングタイムにもかかわらず、若い女性客で賑わっていた。フロアー担当で日本茶アドバイザーの中野京子さんによると「予想したよりも来店客の年齢層は広い」とのこと。お茶といえばペットボトル茶の昨今、急須を使って淹れる飲み方がかえって物珍しがられ、口コミ(ブログ?)で学生や若い女性の間でも話題になっているようだ。食事やスイーツメニューも充実しており、ランチタイムや土曜、日曜などは空き席待ちが出るほど。夜の日替わりメニューを目当ての単身赴任の男性客なども見受けられるという。

もちろんここで使用している茶葉は百パーセント高知県産。正しい(おいしい)日本茶の飲み方を日本茶アドバイザーの資格を持つ担当が教えてくれるのも新しいサービスを感じさせる。「物珍しさで来てくれているお客様を固定客にすること。中心商店街の集客力のあるお店として根付いて続けていくこと。そのことで土佐茶を淹れて飲む習慣を県内の家庭に広げていければ」と店長の河﨑朱美さん。

店内では通常100グラム入りで販売されている土佐茶を、気軽に購入し、新鮮なうちに飲み切れるよう30グラム入りにリパックしたものや、急須、茶器セットなども販売している。

取材を通じて店長をはじめスタッフの土佐茶の文化を県内に広めていきたいという熱い思いが伝わってきた。

高知県内の緑茶の一般家庭における購入量は平成20年に全国46位。それが平成21年度には32位と増加している。土佐茶の消費拡大、ブレンド茶の原料茶からブランド茶を目指す挑戦はこれからが正念場である。

全国農業協同組合連合会
高知県本部(JA全農こうち)
農畜産部 農産販売課

☎ 088-884-8116 ■所在地/〒781-8510 高知市五台山5015-1
■URL/http://www.zennoh-kochi.jp

土佐茶カフェ

☎ 088-855-7753 ■所在地/〒780‐0841 高知市帯屋町2丁目1‐31
■URL/
http://www.pref.kochi.lg.jp/~nougi/tosacya/tanosimi/tanosimi.html
参考文献 「くらしと農業第25巻2号」