公益財団法人高知県産業振興センター 高知県中小企業支援センター
私たちは、地域の企業を応援します。
マテリアル・マイレージ
食料の自給率が40%以下の日本、国民一人あたりのフード・マイレージが世界一の日本である。木材ならばウッド・マイレージ、石材ならばストーン・マイレージであり、鉄やセメントなど建築資材も含めればマテリアル・マイレージが対応する。「その場調達」でマイレージ(輸送コスト)を小さくすれば、環境保護になり、地域経済にもプラスになるのだが、日本人は不足するものなら何でも、海外から取り寄せれば良いと思っている。
ヨーロッパの石積み建造物の場合、近くに石切場がある。日本でも、城壁の石材も近場での調達が多い。それでも重い石材を運ぶのは大変で、修羅(そり)で引く、浮きを付けて水中を引くなど様々な工夫が成されてきた。ギリシャのアテネで驚いたのは、全てが大理石だったことである。建造物だけではなく、歩道のタイルも大理石である。遠くのオリーブの山々は大理石、納得である。地中海沿岸では、手近な安価な石材が大理石なのである。
子供の頃、父親の転勤で日本中を移動した。最も長距離は福岡から札幌で、3泊の旅であった。中1の時である。煤煙に顔を汚しながら、車窓からの景色や風物の変化を飽きもせず眺める旅であった。防風林・屋敷林の風情も異なる。トンネルを抜け峠を越えると、粘土の種類に応じてだろうか、家々の屋根瓦の色が変わっている。地域の個性が感じられ、集落の様子から環境の相違が見えてくる。丸い川石の法面、角張った山石の法面、棚田の風情も異なっている。ストーン・マイレージを子供ながらに読み取っていたようである。
中国・雲南省西部は竹の宝庫である。ミャオ族は竹に関わる文化を持っている。生活用品は勿論、家の壁や屋根、さらには橋も竹である。竹の揺りかごで、納骨は竹筒である。
黄土高原では横穴住居である。崖に横穴、または中庭になる穴を掘ってから横穴を作る。この地下住居ヤオトンは断熱性が高く、冬夏を問わずに快適だそうである。中近東では日干し煉瓦で家(アドベ)を造っている。日干し煉瓦は、繊維質の補強剤を練り込んで天火で乾かしたものであり、積み上げて壁面を作る。木材を渡してその上に煉瓦を積む屋根、あるいはアーチ構造の屋根に積み上げている。内部は涼しく保たれ、暑く乾燥した気候に適している。雪の冬山での緊急避難的に作る横穴の雪洞では、急斜面が必須である。掘り出した雪の搬出に労力を取られないためである。横穴の雪洞とヤオトンはよく似ている。アラスカのイヌイットがドーム状に積み上げる雪洞(イグルー)では、内側の床から圧雪ブロックを調達し、床を下げていく。アドベの日干し煉瓦と同じ発想である。いずれもその場にある土壌や氷雪を材料とする「その場調達」である。
決壊した堤防の仮止め工事で使う土嚢は「その場調達」そのものと言える。先日の高知新聞夕刊(2011/1/12)には、工科大発の土嚢建築が紹介されていた。少量のセメントを加えた土砂を袋詰めにした土嚢を、有刺鉄線で補強する工法である。面白い発想である。トン袋(フレキシブル・コンテナー)も仮土留めとして、また鉄線の金網の蛇籠に砕石を詰めて護岸として使われる。竹の蛇籠も昔は多かった。これらの詰め物の中身、土砂・砂利・砕石など、そのほとんどが「その場調達」であり、マテリアル・マイレージを小さくしている。
環境保全でいえば、森林率84%の高知県だから、県産材を使ってウッド・マイレージを小さくしなければならない。土佐の森からの木の家を建て、それを長持ちさせて、CO2を貯蓄したい。さらに、持続可能な森に仕立て上げて、CO2を定期預金に回そう。
平成17年度まで当センターのプロジェクトマネージャーとしてご活躍
鈴木朝夫先生の叙勲
誠におめでとうございます
弊誌に毎月「ぷらっとウォーク」を執筆いただいている鈴木朝夫先生がこの春の叙勲で「瑞宝中綬章」を受章されました。心よりお慶び申し上げます。
先生は東京工業大学の金属学の教授を経て、「高知工科大学」の開学の際に副学長として高知に来られ、同大学の発展に大変ご尽力されました。また、平成11年からは当高知県産業振興センターの理事に就任いただき、14年度から3年間は理事兼プロジェクトマネージャーとして県内の中小企業支援、産学連携の推進に大きな貢献をしていただきました。
改めて、この度の受章を職員一同心よりお慶び申し上げますとともに、先生のますますのご活躍をご期待申し上げます。

