情報プラットフォーム 2012年10月号 No.301

特集 女子力

菊水酒造株式会社
「女性による女性のための
お酒づくりプロジェクト」

もっと自由に、もっともっと枠にとらわれずに まだ行くの?(苦笑)

自分たちが飲みたいお酒を創りたい

色とりどりのゼリーのお酒、カフェ風デザインのヨーグルトのお酒。工場内の同社の製品を紹介するコーナーには、「女性による女性のためのお酒づくりプロジェクト」発の商品がずらりと並ぶ。今でこそ2カ月に一度のペースで新商品を開発し、売上の2割にまで成長した同プロジェクトだが、2009年1月にスタートするまでは女性が商品開発に参加することはなかった。

「(他社に比べて)お酒のアイテムはすごく多いのに、女性の自分が買って飲んでみたいとか、大切な人に贈りたいと思うものがまったくなかったんです。」プロジェクトリーダーを務める松岡さんは言い切る。

当時は現社長が主に商品開発を行っていたが、現社長はすさまじい大酒飲み(春田部長談)で、同社の商品は、〝たくさん飲めるお酒〟=〝美味しいお酒〟という考え方で作られていた。

プロジェクトメンバーと春田総務部長

しかし春田部長は営業先で全国のバイヤーと話す中で、東京―高知の地域格差、20代~中高年の世代格差、男性・女性の差があり、それぞれに求められる商品を提供する必要性を確信しており、女性の感性を理解しようとしていた。「じゃあ自分たちが『カワイイ』と思うものを持ってきてよと言ったら、あるブランドの刺繍がたくさん入ったハンドタオルを渡されたんです。でも、洗濯がたいへんなんじゃないの?とは思いましたが、『カワイイ』がわからない。この感性を理解するには時間がかかると思いましたし、自分の限界を感じました。これはもう女性だけでやってもらった方がいいということでプロジェクトを進めました。」

プロジェクト会議進行中

プロジェクトの第1号はリキュール「ゆず美人」「うめ美人」。まずは既存の商品のパッケージデザインと味を改良した。「実際やってみて商品開発の難しさを実感しました。『こんなの女性は買わない!』って言うのは簡単です。じゃあ買ってくれるものにするには具体的にどうしたらいいのかわからない。」そこでターゲット世代の一般の女性達を集め、開発中のお酒について率直な意見、ヒントをもらう女子会形式のモニター座談会がスタートする。高知・東京・大阪・名古屋・香港と各地で開催され今では30数回を数える。「部長がいると皆さん気を遣ってホントのことが言いづらいので、部長には外れてもらうこともあります。」

常識やぶり!スイーツ感覚の食べるお酒誕生

一般女性の意見を聞く座談会

座談会形式にも慣れてきた頃、ついにプロジェクトを一気に軌道に乗せるお酒が誕生する。スイーツ仕様の瓶に入った、スプーンですくえるデザート感覚の「ゼリーのお酒」だ。

ゼリー状のゲル化したお酒への要望が居酒屋など業務筋からあったため、座談会で500㎖の瓶に入れて提供したところ、細い口からなかなか中味が出てこない。参加者から「飲むんじゃなくて、スイーツ感覚の食べるお酒にしたら」というアイデアをもらい順調に開発は進む。しかし試作品を見た瞬間、春田部長は絶句。「100㎖で300円という設定で、カップ酒が100円近くで売られる事もある業界にとって常識破りの価格なんです。バイヤーをどうやったら説得できるのか頭を抱えました。」これまでも革新的なペットボトル入りのお酒「e‐style」を開発したとき、コンビニや量販店のバイヤーが新しいものへのリスクに尻込みし、営業に苦労した苦い経験がよみがえる。

まずはインターネットでの先行販売で反応を見ることにしたところ、ふたを開けてみると当初の心配をよそに多くの問い合わせが集まる。本格的に一般販売をスタートし、全国の量販店等でヒット商品となり、同社内でもプロジェクトのポジションが確立する。

ヒアルロン酸配合ゼリーのお酒

原価・工程のややこしさは考えるな

サントリー創業者の「やってみなはれ精神」にも似た同社のチャレンジへの寛容さが同プロジェクトを支えている。「実際にゼリーやヨーグルトのお酒の製造工程は、一般のお酒に比べてまだまだ手作業の部分が多く、大変なんです。でもそこを気にしすぎると新しいものが生まれない。極力、原価・工程のややこしさは考えるなと言ってます。それに(ゼリーのお酒のように)売れるか売れないかは売ってみないとわからない。

もともと同社は商品アイテムの多さが特徴であり、様々な酒類製造免許を持ち、菊水に行けば何でもある、供給能力も十分にある、と評価が高い。常に新しいことにチャレンジしてきた結果、ノウハウが蓄積され「バイヤーから一見無理そうな要望が出ても、すぐに答えが出せる自信があります。」

メンバーの成長

プロジェクトメンバーは醸造担当者や、アメリカ人の社員など個性あふれる5人。男性の意見が入ると方向性がぶれるため、自分たちの感性を信じ、あえて男性の意見は採り入れない方針を貫く。春田部長によると「当初は任せるとは言ったものの、つぶれるんじゃないか」との心配もあったという。スタートから3年たった今、プロジェクトでは常に10アイテムほどの商品企画を平行して進め、メンバーの成長は頼もしい限りだ。「男性、もっとガンバレですね。(笑)」

「これまで若い人(20代)向けのお酒が多かったので、これからは大人の女性向けのお酒に挑戦してみたい。香港にも輸出していますが、もっと海外へも女性向けのお酒を広げていきたい。(松岡さん)」技術力と女性の感性がタッグを組み、次はどんな新しいお酒の世界を見せてくれるのか、菊水酒造の枠にとらわれない取り組みから目が離せない。


会社概要

会社名

菊水酒造株式会社

所在地

〒784‐0004 高知県安芸市本町4-6-25

TEL・FAX

TEL 0887‐35‐3501
FAX 0887‐35‐3503

URL

http://www.tosa-kikusui.co.jp/